(C)野田サトル/週刊ヤングジャンプ・集英社
画像:ゴールデンカムイ公式サイトより引用
舞台は明治時代の北海道。軍を抜けたばっかりの主人公の杉元は、アイヌの少女アシリパと出会い、隠されたアイヌの金塊を探す旅に出る。
『ゴールデンカムイ』のオススメレビュー
アイヌの文化なんて中学生の日本史くらいでしか知らなかったが、この漫画を読めば自然とアイヌ語が身につく…と思えるくらい、アイヌ漫画である。
旅の途中に出てくるアイヌ料理がおいしそうで仕方がない。と思いきや、キャラクターたちは実は重い過去があったりと、シリアスも抜け目ない。と思いきや、くだらないギャグパートがあったり、恋愛模様があったり、まさに闇鍋ウエスタン漫画である。この漫画はストーリーの面白さもさることながら、キャラ萌え要素が強いマンガだと思っている。
登場人物はほとんどおっさんばかりだが、悪者でも憎めないところがあったり、可愛い趣味があったりと、婦女子たちの心をくすぐるところが多々ある。主人公の杉元は、不死身の杉元と呼ばれ、どんな敵が来ても臆することなく戦うのが勇ましく、かっこいいのだが、少女雑誌を読むのが趣味だったり、道端に咲いている花をめでたりと、少女のようなところがあり、見ていてとてもかわいく感じる。杉元と犬猿の仲の尾形という軍人は、狡猾な性格で、親を殺すこともいとわない残忍さを持つが、仕草や挙動が猫のようで、愛らしく感じる。
また、ストーリー自体も面白い。アイヌの隠された金塊をめぐり、杉元達や第七師団といった軍人が争奪戦を繰り広げるが、敵と味方がすぐに入れ替わったりするので、たまに今こいつらは何をしてるんだっけ?となるのが少々面倒くさい。また、この作者の癖なのか、前ページまで和やかだったのに次ページで見開きでいきなり頭を撃ち抜かれて死亡したりするので、気を抜いて読んでいるとびっくりしてしまう。
(21巻までのレビュー)
日露戦争後の北海道で、奪われた金塊を巡るバトルが繰り広げられるヤングジャンプの人気漫画。登場人物は一癖も二癖もある危険な奴ばかりで、戦闘シーンもかなり激しい。バトルやサバイバルに恋愛やグルメまで、あらゆる要素が詰め込まれた新感覚の作品。
漫画作品では珍しい、北海道のアイヌが登場する漫画。ストーリー・設定・キャラクターなど一つ一つにオリジナリティが感じられるので、最近のよくある設定やパターンを用いた漫画に飽きていた分かなり面白く感じた。そして絵やキャラクターは男らしさが全面に出ていて、綺麗な絵で描かれるキラキラしたイケメンとは全く違うところも新鮮で良いと思った。
ヒロインも守られるだけのヒロインではなく、自らが強い意志や能力を持っているのでかなり好感が持てる。最近の漫画やアニメのヒロインをはじめとした美少女キャラの扱いに対しては同性から見ると複雑な部分も多く、なんともいえない気持ちにさせられる事が多いのだが、この漫画はそのような事を感じさせるシーンがないので安心して読める。
またアイヌであったり日露戦争後の日本やロシアであったり、扱うのが非常に難しいテーマを扱いながらも一つ一つ丁寧に描写しているのでその点も評価したい。物語の中ではギャグシーンや作者の趣味が伺えるような場面も多々盛り込まれているが、箸休め的なものだったりわかる人にはわかるというタイプのものが多いので、本編の邪魔になるような事はない。
全体的に見て難しいテーマを選んでいたり、新しい試みに挑戦しているなと感じる作品なのでさじ加減が非常に大事だと思うが、うまくコントロールしながら描いている作者の裁量が素晴らしい。このような作品によって日本の漫画界に新たな風が吹いてくれればと思う。
(18巻までのレビュー)